IoT関連コラム

IoTシステム開発の成功は、マス・カスタマイゼーションが鍵となる

 IoT(モノのインターネット)の普及により、膨大な数のデバイスがインターネットに接続されるようになりました。この傾向は今後も続き、IoTシステム開発者はますます多くの開発案件に携わっていくと考えられます。しかし、IoTシステム開発の成功には、システムを一から構築し納品するだけでは十分ではありません。重要なのは、個々の顧客のニーズや要求を理解し、それに合わせて製品をカスタマイズしていくことです。つまり、マス・カスタマイゼーションが鍵となるのです。本記事では、IoTシステム開発におけるマス・カスタマイゼーションの考え方の重要性について事例を用いて紹介していきます。

1.マス・カスタマイゼーションとは?

図1.マス・カスタマイゼーションとは?

 マス・カスタマイゼーションは、製品やサービスを大量生産しながら、顧客一人一人のニーズや要望に合わせて個別にカスタマイズを行うというビジネスモデル自体を変えていく考え方です。つまり、顧客の個々の要望を反映した製品やサービスを、大量に生産することで、顧客にとって最適なものを提供することができます。マス・カスタマイゼーションを採用することで、顧客満足度が向上すると同時に、生産コストの削減や市場シェアの拡大など、企業側にとってもメリットがあるとされています。

2.なぜマス・カスタマイゼーションの考え方が重要なのか?

2-1.需要の多様化に対応するため

 IoTシステム開発には、求められる機能や特性、要望は多岐にわたり、個々の顧客のニーズに応えるためには、カスタマイズが必要です。例えば、「通信部分は自分たちの製品を使用してIoT化を行いたい」、「OSはそんな高機能じゃなくていいから安くお願い」など様々です。マス・カスタマイゼーションの考えを基にして、開発を進めていく事で顧客の多様な要望に対応し、拡大していく需要への対応や競争優位性の獲得が可能となります。

2-2.コスト削減と生産効率の向上のため

 IoTシステム開発は、様々な技術が必要となるで、多くの人手とコストがかかります。マス・カスタマゼーションの考えを取り入れる上で、既存資産の活用は必要不可欠となります。既にある資産を使ってIoTシステム開発のカスタム化を行うことで、ローコストかつスピーディーに顧客のニーズに合わせた製品の提供が可能となり、不必要なコスト/タイムを削減し、生産効率の向上が実現します。

3.マス・カスタマイゼーションの実例

3-1.実例

アディダス

図2.アディダスのスピードファクトリー
出典:SBクリエイティブ株式会社 ビジネス+IT「アディダスの全自動工場「スピードファクトリー」は何がスゴいのか」より

 アディダスは、スポーツ用品メーカーとして顧客それぞれのニーズに応えたカスタマイゼーションのパイオニアとして知られています。消費者の足の形状データをそのまま工場に送信して、ロボットによるオートメーション製造によりわずか数時間~数日のリードタイムで、ぴったりのシューズを届けるサービスを始めました。この計画を具現化したものが全自動工場「スピードファクトリー」であり、足の形状をデータ化するコアとなる3次元モデル技術「ARAMIS(アラミス)」を活用したオーダーメイドモデルの製造を行うサービスです。ロボットによる大量生産でコストを削減しつつも、設計情報のデジタル化により個々の消費者に合わせた特注品の製造を実現しました。

アライン・テクノロジー社

図3.2022年グッドデザイン賞「インビザライン・システム」
出典:公益財団法人日本デザイン振興会「2022 グッドデザイン賞」

 インビザライン・ジャパン株式会社は、米国アライン・テクノロジー社(Align Technology, Inc.) の日本法人で、「マウスピース型矯正装置」のパイオニア企業として知られています。一人ひとりにぴったり合うマウスピース型歯科矯正器具を販売し、形状を少しずつ変えたマウスピースを一定期間ごとに順番に取り換えながら正常な歯列に矯正する器具です。歯形のデータを3Dスキャナで取得し、そのデータを基に必要なマウスピースを3次元CADで自動設計。設計データを加工機に入力することで、求める形状のマウスピースを自動加工を行い、カスタムメイドで作製されたアライナー(マウスピース)で歯列矯正を行います。

3-2.IoTシステム開発で必要となるソフトウェアなどに応用して考えてみる

図4.ソフトウェアにおける既存資産の応用図

 次にIoTシステム開発で必要となるソフトウェアなどに応用して考えてみます。あるシステムを開発する場合、図4のモジュール(A~F)まであり、その上にアプリケーションがあるなど、色んなコンポーネンツが考えられます。全てのモジュールを1から作っていく場合、多大なコストと時間が掛かります。ですが、既にある資産のモジュールを当てはめていく事で解決します。モジュールA~Dまで既存資産、モジュールE/Fとアプリケーションのみ新規で作るという考え方です。

 開発を1~10積み上げていくのではなく、10欲しい要素のうち6までは既存資産があるという考え方で、7~10ここだけを新しく作成し、コストも開発期間を削減することができます。この考えを浸透させれば、ソフトウェアにおいてもマス・カスタマイゼーションの考えを取り入れて考えていく事ができるのです。

4.既存資産の有効活用が、IoTシステム開発の明暗を分ける

 先程、ソフトウェアにおけるマス・カスタマイゼーションの考えを取り入れるというお話をしましたが、この考えは、まるっとIoTシステム開発にも当てはめることができます。いかに既存資産を有効活用できるかによって、時間もコストも大幅に削減できます。IoTシステム開発成功の明暗を大きく左右する考えです。この考えを簡単な例を用いて解説してみます。

●依頼者A(住設機器メーカ)

 これまでスタンドアローンで機器が動いていたが、ネットワークの技術を新規で取り入れる必要があり、またクラウド側の技術も新しく入ってくるという所で、依頼者Aは自社製品のIoT化の検討を行っていた。そこで、エッジデバイスからクラウドまでのソフトウェアを外注しようと考え、外部企業数社に見積もり依頼を行った。

●見積もり依頼した外部企業の概要

A社:ミドルウェアも手掛けるが受託が中心の会社

B社:ソフト受託行っているため受託規模の大きい会社

C社:新規開発がメインの技術商社

E社:製品のカスタマイズが得意なソフトウェア会社

●実際の見積もり結果

A~C社に関しては、ほぼ新規で作ることを提案し、横並びの開発費用(数千万の予算に対して倍以上)と期間を提示した。ではE社はどうだったのか?

●E社の場合

図4.E社が行った依頼者Aへの提案

 E社としての提案は、既存資産を流用して、二週間で原理試作デモを作成、予算内でシステム構築を実現可能であることを提案した。社内の資産を見渡すと使えるパーツが色々転がっており、それぞれのパーツを組み立てればすぐに開発可能であった。依頼者Aから提案書を求められる段階だったが、既存資産で作った簡単な試作デモで実際に動作を実証し、必要となる開発部分だけを見積もりで提案を行った。結果的に依頼者Aの希望する予算内で構築し受注へと繋がった。

4-1.マス・カスタマイゼーションの考えを実現できる企業とできない企業の差は?

 上記の実例から、マス・カスタマイゼーションの考えを実現するには、ゼロベースでシステム開発を進めていくという考えではなく、クライアントと自社の既存資産をいかに有効活用し、低コスト/短期間での開発を実現できるかという考え方で決まります。すなわち、マス・カスタマイゼーションの考えを取り入れて、開発や商談などに取り組めるかによって、先ほどの例のようにビジネスチャンスを掴むことができるという事になります。この考えを持っているか/持っていないかの差は、企業にとって大きな差を生み出すことになるのです。

 IoTプラットフォームサービス「iot-mos」では、マス・カスタマイゼーションの考えを基にお客様の課題と常に向き合っています。

特徴としては、

―ハードからクラウドまでをシームレスに提案。

―様々なセンサー、通信方式など利用シーンに合わせたカスタマイズ対応可能

―試作(PoC)から量産まで対応可能

―JavaScriptでWEBエンジニアも開発できる

―既存の機器を簡単IoT化

 既存資産を上手く利用し、ご自身のアプリケーションに一番注力するべきところで、限りある皆様のリソースをどこに重点を置いて割くか、その際の上手い道具として「iot-mos」をご検討していただければと思います。

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